『規律書』改定案: 限りなく逐語訳に近い日本語訳 (その2)
第二部: 正式[1]な裁判の特別戒規過程 [原書 p.74-]
序: この第二部を活用する前に、第一部を読んでおくこと。
第二部は正式な裁判の場合にのみ用いられる。
第1章: 当事者と法治権
事例に関する当事者
1.
被害者が、私的(個人的)な違反についての告発者となる。
上記(第一部、第二章)に記載されている和解の手段が講じられた証拠が示されない限り、この正式の[裁判]過程が採られてはならない。 かかる過程が採られる以前に、教会会議は、正式な裁判過程によらずに、事例の解決をはかることが適当(“proper”)である。
2.
品行方正な(“in good standing”)会員[2]は、誰でも、他の会員を、彼の[3] 裁判権が属するところの教会会議[4]に訴えることができる。 また、強いられて告発者になってもいけない。 品行方正とは言い難い会員や精神的失陥を持つ会員からの訴えが受理される際には[その訴えの妥当性について]調査を必要とし、悪意を公とする(“manifest malice”)者からの[訴え]はいかなる時も受理されない。 もし、訴えが虚偽であるか、悪意にもとずくものであることが判明した場合は、訴えを起こした者が譴責の対象となり得る。
3.
教会会議は、告発者の不在のために、戒規がおざなりになるようなことを許容してはならない。 違反が公の知るところとなり、あるいは私的なスキャンダルが公的なスキャンダルとなった場合、そして、[当事者の]個人が告発者となることを拒否しているような場合、教会会議が 調査のために特別検察委員を任命し、かかる訴訟手順を遂行しななればならない。 特別検察委員は、その教会会議、もしくは下位の会議、あるいは一会衆の会員であってもかまわない。 [5]
4.
教会会議は、公的報告(“fama clamosa”)に基づいて、特別検察委員を任命することで、その過程を開始することができる。 この公的報告とは、広く知られ、あやふやではなく、公知のもの、そして信頼性を認められるもののことであって、無責任な噂(うわさ)とは異なる。 訴えは、より一般的な表現で記述されるものとする。 が、その他の全ての面において、[各々の]訴えの特殊事情に応じて、原則に順応するものとする。[6]
(下記 第二章、第一段落 参照)
噂に基づく[裁判]過程の開始を回避するために、噂を調査する委員会がまず構成されてもかまわない。 名誉毀損をされたと考える者は調査を要請することができる。 教会会議には、この要請を受理するか却下するかの[判断について]裁量権がある。
法治権(“Jurisdiction”)
5.
教える長老の[会員権]停止、[役員権]剥奪、除名については 中会に源泉的な法治権が属する。: その他[の法治権]については 小会に属する。 上位の教会会議は、下位の会議に対して[裁判]過程開始を指示できる。 もし、下位の会議が過程開始を拒否するか、その適切な能力を欠く場合は、上位の教会会議は過程を[自ら]開始するか、委員会を指名できる。
6.
もし、他の会衆(教会)の地区に居住している会員が、譴責に値する違反をしていると告発された場合は、彼の居住する地区の会衆(教会)の小会が、彼の所属する会衆(教会)の小会に事件付託(”shall refer”[7])をする。 他の[中会の]地区にすむ教える長老についても、彼の所属する中会が同様の手段を講じることができる。 あるいは、彼の所属する教会会議が、彼の居住する地区の教会会議に、事例審理を要請し権限付与することができる。 [ある任意の]会衆が解散した場合、この小会で審理中の事例は、中会の法治権の下に移動する。 もし、[ある任意の]中会が解散した場合、この中会で審理中の事例は、シノッドの法治権の下に移動する。
特別規定
7.
当該事例の当事者、助言者、検察委員は、本件の結審に[判事として]参加することはできない。
8.
訴追され、刑罰を受け、あるいは有罪判決を[すでに]受けた者が、同じ件で、更なる訴訟にさらされたり譴責を課されることがあってはならない。*
(* 第三章、第13段落、最後の文 参照)
9.
教会会議は、この第二部を、第一部に記載の譴責行為をするにあたっての参考にすることはできる。 しかしながら、前述の 特別規定の7項、8項 については、 第一部の規定の下(もと)で決定された すべての戒規事例に該当する。
第2章: 裁判過程の開始手順
1.
正式な裁判過程を開始するためには、告発者もしくは特別検察委員が告発内容を文書化し、署名の上、提出するものとする。 それには、この行為の具体的な違反[内容]、日時、場所、状況が明記されるものとする。 それには、証人の名簿と、証拠として提出された全ての文書のリストが掲載されるものとする。
2.
告発文に署名した者は、当該事例の起訴行為(“prosecuting”)に責任を負う。 もし、教会会議が、申し立てられた違反内容が譴責対象となり得ると判断し、また、提示された証拠が裁判に充分なものであると判断し、しかも、キリストの定め(マタイ18:15−16)に則していると確信するに至った場合、[教会会議]はその訴えを詳細を付記した上で、告訴状として文書にしたためるものとする。* これは、これを発する教会会議の議長と書記によって署名される。
(* 第二部、第三章、第五段落 参照)
3.
告発がなされた会合においては、裁判の日時、場所を決定し、当事者全員を召還すること以外、それ以上の審議や決定がなされてはならない。 不必要な遅延が起きてはならないとはいえ、[告発者側と被告発者側の]双方に充分な準備期間が与えられる。 全ての当事者の同意が無い限り、告発状の発行から裁判当日までに、最低10日間が必要である。 もし、新たな証人や証拠が見つかった場合は、被告発者には その事実が知らされて、抗弁の準備のために追加的時間が与えられる。
4.
告発文の公式な写し(“an official copy”[8])が、被告発者に渡されなければならない。 また、それは、告発に応じるようにとの召還状(議長、書記の署名がなされたもの)とともに、彼の家屋に置いてくるか、もしくは書留郵便によって[配達される。] もし、最初の召喚状が無視された場合、教会会議は第二の[召喚状]が発行される。 それによって、適宜、猶予期間が与えられ、また、彼が出席しない場合でも[被告発者の]欠席のままで[裁判が]進行することを知らしめる目的を果たす。 もし、被告発者が、最初の召喚状を無視すると宣言したとしても、教会会議は第二の召喚状を発行するものとする。 (推奨様式 20号 [9] 参照)
5.
召喚状は、教会会議によって任命された者であれば誰によってでも発することができる。 また、彼は、教会会議に対して、たしかに配達した(あるいは書留郵便で郵送した)ことを証言する。 もし、被告発者が返答しない場合、教会会議は[被告発者]欠席の状態で、[裁判]過程を進行させる。
6.
教会会議の書記は、告発者(または[特別]検察委員)により指名された証人に、召還状を発行する。 教会の会員だけが、召還され得る。 また、それは、彼(彼女)の所属する教会会議のみである。* また、その他の者の出席が要請されてもかまわない。 召還状を無視する会員は、会議への侮辱[と看做され]譴責の対象となり得る。 (推奨様式 21号 [10] 参照)
(* 第二部、第三章、第八段落 参照)
7.
もし重要な証人が出席できないような場合、教会会議は1人ないし複数の会員を指名して[重要な証人]の証言を記録して[くる]ことができる。 かかる状況において、当事者たちには、証人に直接面談し、質疑を行うという利点がある。 教会会議には、被告発者にたいして、その名誉を守るための ありとあらゆる機会を提供する義務を有し、また、すべての状況下において、各個人が告発者と直接会う権利を確保する義務を有する。
8.
裁判を行っている[教会]会議(“the trial court”)の要求に応じて、同位の教会会議に[権威の下にある]証人は[11]、各々の教会会議によって裁判に召喚され、証言することができる。[12] 召還された証人は、召喚状に応じたことによって生じた諸経費について補填される権利を持つ。 召還状に応じることが不可能な場合、裁判中の教会会議は、その他の教会会議に、(各々の質問にたいする回答を含む)証言録を記録すること、そして、(裁判の記録されるものとして朗読されるべく)その公式な写しの送付を要請することができる。 その証言の価値の査定においては、教会会議は証人が被告発者と会っていないこと、反対尋問(“cross-examination”)の機会が与えられた者がいないことを考慮しなければならない。[13]
9.
教会会議は、裁判が決着するまでの間(もっとも、検察過程が不必要なまでに遅延してない限りにおいて)、被告発者にたいして 培餐の権利、もしくは、役員であれば]役員権の行使、または その双方を慎むように要求することができる。
第3章: [個々の]事例の裁判について
1. 裁判を遂行するにあたって、全ての審理過程の記録は、正確かつ信用に足る方法によって慎重に保存されるものである。 それには、とりわけ、訴え(”the charge and accusations” [14])、懇願と判決が、証人の証言とともに、含まれるものとする。 全ての記録の完全かつ原本に忠実な写しが、要請に応じて、上位の教会会議による参照可能な状態になっていなければならない。 当事者は、経費自己負担によって、各自の写しを有することができる。
2. 教会会議が成立した場合、議長は次のことを確認する。 [1] 告発文が発行され、証人は召喚されたか。[2] 当事者(または その代表者)が出席しているか。[3] 証人(もしくはその証言記録)が出席して([もしくは用意されて])いるか。 [以上である。] 裁判を開始するに際して、[まず初めに、] 議長は、いままさに教会会議の会員が取り掛かろうとしていることが厳粛な責務であること、主の家の裁判官としての彼らの責任について再認識を促し、そして、彼らの脳裏から全ての偏見と個人的な思惑を消し去り、被告発者と教会との霊的幸福(“the spiritual welfare”)を考えるように命じる。 議長は、訴えの性格とその重大さを説明し、戒規の目的を述べる。 彼は、被告発者の権利と義務とを明確にし、公正かつ公平な裁判を[被告発者に]約する。 裁判の過程において、いつでも、教会会議は3分の2[以上]の[賛成]投票によって、傍聴人の退出[命令]を決定することができる。 しばしば、「秘密会(”executive session”)」と称されるもののことである。
3. 各当事者は、出席すること、もしくは助言者・代表(“counsel”)によって代表されること[いずれか]ができる。 教会員ではなく、教会会議の法治権の下のない者が、助言者・代表として振舞うことはできない。 もっとも、これは、当事者が私的に法律的な助言を受けることを妨げるものではない。 当該事例において、当事者、助言者・代表、特別検察委員となっているものは、判決を下すことに参与することはできない。
4. 被告発者は、はなはだしい不正があったこと、教会会議には裁判権がないこと、または 告発は(証明されれば)譴責に値しないこと、を理由として、裁判過程に異議を唱えることができる。 教会会議は、彼の異議を聞き入れることはできる。が、彼は教会の原則に反して論じることは許されていない。 もし、これらの異議のいずれかが妥当と認められた場合、教会会議は本事例を却下するか、本質は不変更としつつも訴えに修正を加えるものとする。 被告発者は、当該事例の判決において、[参加している]教会会議の会員のいずれの会員についても、その資格に疑問を呈することができる。 もし、それが支持され、それ以上議員定足数を満たさないような場合は、本事例は上位の教会会議への事件付託(“be referred to”)される。
5. もし異議が却下された場合、議長は、被告発者にたいして、告発内容に関して「有罪」か「無罪」かを問う。 もし、「有罪」と返答するならば、教会会議は、課される譴責の重さについて決定する。 もし、「無罪」と返答するか、返答を拒否するならば、教会会議は裁判過程を進めることとなる。 いずれの場合にしても、彼の請願、あるいは返答の失念は記録される。 裁判の進展のために必要であれば、検察側の証人が召喚され、その後、抗弁する側[の証人が召喚される]。 双方が、相手に対して反対尋問(“cross-examine”)をすることがゆるされる。 被告発者が欠席していない限り、証人は彼の臨席のもとで尋問される。 全ての最初の証言が聞かれた上で、いずれの側からであっても、反論のための証言の機会が与えられる。 しかしながら、被告発者に証人の名前と証拠の趣旨とが知らされた時[15]、教会会議の許可がないかぎり、新たな証拠は加えられない。
6. 証人尋問は議長によって行われる。 いずれの側も、尋問の方法や特定の質問について異議を唱えることができる。 もし、議長が異議を却下した場合は、この訴えは教会会議に提出することができる。 もし、この裁定が支持されなかった場合は、この事実を(異議とともに)記録するものとする。 教会会議自体、あるいは当事者は証人宣誓を要求することができる。 宣誓は議長が司る。全員が起立し、証人は右手を揚げて宣誓する。 (宣誓文 については 推奨様式 22号 [16])
7. [告発者側、被告発者側]双方が、証人の品性と信憑性について、質問することができる。そして、教会会議は、異議を聞き、その[異議の]妥当性を判断する。 もし、異議が支持された場合、証人は退出を告げられる。 精神的欠陥、幼稚さ、生活上の醜行、悪意、は証人の証言[の妥当性]が問われる根拠となり得る。 これらの非適正要件の程度が、証人の証言を妨げる[理由として]は十分ではない。 しかしながら、教会会議の会員は分別力を用いてかかる証言の価値を判断しなければならない。
8. 証人は、[裁判審理中の]本件に関する限り、真理を、その全貌について、偽りなく、 証言する義務を負う。 それを行うことで、証人が自らを貶(おとし)める(“incriminate”)ような場合については、証言をすることを強いられないが、その理由を述べる義務はある。 質問、そして、彼の回答拒否とその理由は、すべからく記録される。 教会会議のすべての会員は、[彼自身も]証人として、本件に関して彼が知りうるところのありとあらゆる事柄を教会会議に知らしめて公正な判決に資する義務を有する。
9. 証人は、裁判審理中に証言を補遺(”postscript”)という形で訂正することができる。 また、それは適切に記録される。 信用に足る証人であり得たと思料される故人の供述や文書の証拠は、書かれたものであれ、印刷されたものであれ、受理される前に、適切に本物であるとの確認(“authenticated”)がなされなければならない。 通常、それは「宣誓供述書(“affidavit”)」によって確証され、合法的に任命された官吏[17]によって証言されなければならない。 他の司法権主体(“judicatories”[18])の議事録からの引用は、書記の署名によって本物であるとの確認がなされる。状況証拠は決定的[な証拠]ではない。 夫婦は、他方が審理[の対象]とされている時に、証言することを強要されないものとするが、[証言は]許容され得る。
10.
被告発者は、自分自身のために証言することができる。 証拠が欠乏しているような極端な事例においては、「無罪の宣誓(“an oath of purgation”)[19]」をすることができるが、促されるわけではない。 いずれかの側の当事者の要請によって、後段になって尋問される予定の証人を、(もし彼が教会会議の会員でなければ、[20])前段の証人尋問に移すことができる。 ( 推奨様式 31号 [21])
11.
全ての証拠が提示された後、収束を告げる文章が読まれる。 被告発者が、まず発言し、そして検察側[が発言する]。 しかしながら、いずれの側も、記録にあることを超えた事柄や新たな事柄には言及しないものとする。 かかる後、教会会議は、いずれの側からにせよ、更に聴取する必要があるかどうかを決定する。
12.
「当事者の退廷を求める」動議は、次の段階である。 これが[意味することは]、教会会議が(証言の中の疑惑部分を明瞭にするために再度召還することは別として、) 彼らが、これ以上の審理への参加を[認められず、会議席上からの]退場を求められることである。 教会会議は別室に退くか、もしくは、全ての当事者、証人、そして非会員を退場させることができる。 もし、いずれかの側が異議を唱えるならば、全ての審理に出席(参加)した会員でない限り、最終判決の際に投票することはできない。 その故に、正確な出席記録が記される[必要がある]。
13.
教会会議(“the court”)は、証拠の考察において、そして正しい決断に達することができるようにと神様の導きを求める祈祷をもって、審理を開始する。 「立証責任(“the burden of proof”)」は検察側にある。 訴えは、いくつかの細目(部分)から構成され得る。 そして、そのような場合は、投票は各々の細目(部分)に対してなされる。 単一の証言[のみ]によって、被告発者が有罪とされることはない。 もし、ある細目、あるいは全体に対して有罪との判決がなされた場合、教会会議は課される譴責の重度を決定する。 もし、法的証拠が有罪を確証するに足りない場合、宣告は「無罪」でなければならない。教会会議が結審した場合、当事者は呼び戻されて、結果が申し渡される。譴責が課された後に、有罪の判決を受けた者の側において新たな証拠が発見された場合で、しかも、重要性が十分あると思料される場合は、当初の法治権主体(“the court of original jurisdiction”)において再審理をすることが認められる。
第4章: 下位会議から上位会議への事件移送(“removal”)
1.
長老教会政治は、教会会議の上下関係を規定している[22]。 それにより、下位の教会会議は上位の会議に対して責任を負っている。 下位の会議の議決は、上位会議において審理され、[必要に応じて]改訂を受ける。 教会員は、誰でも、下位会議から最高位の会議に至るまで、訴えを起こすことが認められている。 充分な理由があれば、 上位会議は、かかる訴えを却下できる。 下位会議の議決は、上位会議の裁判権の下に、[下記の形式によって] 提起することができる。 [1]記録の審査 (“review of record”)、[2] 不服 (“complaint”)、[3] 事件付託 (“reference”)、 [4] 抗告 (“appeal”) [である。]
記録の審査 [23](“review of record”)
2.
下位の教会会議は毎年一回、記録を次回の上位の会議に提出し、審査に付す。 もし、かかる[記録の]審理によって、譴責対象たりうる違反の扱いにおいて義務怠慢が明らかになった場合、上位の教会会議はこの怠慢に対して注意を喚起するものとし、下位の会議に対しては義務を履行するように指示することができる。 もし、かかる[記録の]審理によって、教会の法と秩序からの逸脱や、会員への明らかな不正があったことが明らかになった場合、上位の教会会議は下位の会議に必要な誤謬訂正を指示することができる。 「不服」もしくは「抗告」によって事例が[当該]教会会議に提示されない限り、[その記録] 審査を担当している教会会議は、[既定の]司法判断を覆(くつがえ)すことはできない。
不服(“complaint”)
3.
不服とは、下位の教会会議の行為を遺憾とする1人ないし複数が、文書によって上位の教会会議に提出されるものである。 それは、関係する当事者、教会会議の会員、あるいは関心ある者[のいずれか]によってなされ得る。* [不服に関する]原告(“the complainant”)は、もし彼が会議に臨席していれば直ちに、あるいはその下会議に対して通知するか、[この不服申し立て]行為を知った時点でその下位会議に対して通知するものとする。 30日以内に、原告は、理由を付して不服申し立てを、下位会議の議長と書記とに提示するものとする。 かかる後、原告は次の上位教会会議の定例会(あるいは会議が指定する日時)において、同様に提示するものとする。 もし、原告が本人で(もしくは代理人によって)当該事例の訴えを起こすために出頭しなかった場合は、かかる欠席が不可避でると看做されない限り、下位会議の判断のほうが有効とされる。 (* 『政治規準』第七章、第11段落 参照)
4.
下位の教会会議は当該事例に関する全ての記録と文書を上位の教会会議に送付するものとする。 もし、これが履行されなかった場合は、上位の教会会議は下位の会議に対してその怠慢を叱責し、書類が整うまでのあいだ公聴会開催を延期することができる。 本件において、下位の会議が抗弁する側であって、その会員から1名ないし複数、またはその他の者が、本目的のために代表として任命される。 下位会議の会員で上位会議の会員と兼任している者は、代理(“counsel”[24])として行動している者でない限り、本事例の結審に関して発言権がある。 もっとも、下位会議の側に不正や過失(“injustice and wrong”)があったことが実証された場合においてはこの限りではない。
5.
もし不服が支持された場合、上位の教会会議は下位の教会会議に譴責を課することができ、また、不服が申し立てられた[(対象であるところの)判断・判決[25]]の全部(ないしは一部)を無効とすることができ、また、下位の教会会議にたいして審理を更に遂行することを申し渡すことができる。 不服の支持は、必ずしも[既定の]判断・判決を覆(くつがえ)すものではない。 いかなる判断・判決についても賛同できず、さりとて不服申し立てをするに及ばずと考える会員は、「異議表示(“dissent”)[26]」をすることと、その[事実]を議事録に記載するように要求することができる。 これが簡潔で敬意のこもった言葉遣いで表現されている限り、かかる者の要求は受理されなければならない。
6.
教会会議は、上位の会議と共に、同位の会議への不服について起訴(“prosecute”)することができる[27]。 また、これは、個人に対しての不服に関する起訴の場合と同じ一般原則に沿ってなされる。
事件付託 (“reference”)
7.
裁判事例に直面している下位の教会会議は、審理が開始されていなくても、または、審理過程のいつであってでも、上位の教会会議に事件付託(“refer”)し、助言や支持を仰ぐことができる。 [下位の会議は] さもなくは、案件全体を上位の教会に事件付託して、判決をしてもらうこともできる。 すべての事件付託は文書でなされ、事例に関連する記録と文書が添付されるものとする。 かかる[書類一式]を、上位会議に送付する義務、そして、公聴会の開かれる日時と場所を当事者に知らしめる義務は下位会議の書記にある。
8.
下位の教会会議は、事件付託 (“reference”) の特権をむやみに利用して、困難な責任を回避してはならない。 通常の状況下においては、[教会会議は]その司法権の下に合法的に(“properly”)もたらされる全ての事例案件を扱わなくてはならない。 しかしながら、重要案件の取り扱いが、[以下の理由から]不能であると思料される場合があり得る。 [すなわち、] [1] 会員数が少数であるが故、 [2] 確固たる結論に達することが不可能である故、 [3] 会議の会員が事例当事者と縁戚関係 (“related”)にある故、[4] 事例の性格からして、それを、かかる地域社会で適用することが得策ではない故、[5] 本事例における 法[の解釈・適用等]に不明瞭な点がある(“indefinite”)故。 [6] [本事例の関する]判決が、教会全体に影響を及ぼすような前例を作ってしまう傾向が認められる故。 [以上である。] もし、上記の理由の一つにでも該当する場合は、下級会議は事件付託を可能とする条件を満たす(“justify”)。
9.
下位の教会会議の会員で上位の会議の会員を兼任している者は、事件付託によって持ち上がってきた事例の公聴会や判決に参加することができる。 助言をするか否か、事例を扱うか否か、下位の会議に事例を、理由を付けて(あるいは付けずに)差し戻すか否か、については上位の会議の権限の範囲内である。
抗告 (“appeal”)
10.
抗告(“an appeal”)とは、下位会議で結審された事例を上位会議へ事件移送(“removal”)することである。 当事者のみが抗告できる。 また、当事者は次の理由をもって抗告することができる。 [1] 裁判過程における異例な扱い、[2] 譴責の実行における不正あるいは不当な過酷さ、 [2] 裁判にさらされている当事者への偏見や不公平が認められる、[3] 不適切な証言がまかり通ったとき、または、重要な証言を拒絶されたとき、 [4] 全ての証言がなされる前に、いたずらに結審を急いだ[事実があった]とき、[以上である。]
11.
抗告の告知は、被告発者がその行為を知らされてから30日以内に、充分な理由を付した上で、文書化した形で、抗告を発した教会会議の書記(“the clerk of the court appealed from”[28])が保管するものとする。[29] そして、彼(“he”)[30]は必要な記録や文書を付して、同様に、上位の教会会議の書記に宛てて次回の定期会議の前までに送付するものとする。 抗告を申し立てるに際し、必要に応じて議事録から抄本(“extracts”)[をとる]権利が当事者に認められる。 教会会議の書記は、かかる抄本を用意するものとするが、膨大な量の場合においては、教会会議はかかる要請をした当事者に実費を請求することができる。
12.
抗告の告知は、(抗告する者(“appellant”)が抗告することを失念しない限り)下位の教会会議が勧告(“admonition”)や非難(“rebuke”)の譴責を執行する事を、禁止する効力がある。 抗告が決定されるまで、教会での特権を停止(“suspension”)する判決、役員職の剥奪の判決、あるいは除名の判決は有効であり続ける。 下位会議の会員で、しかも裁判中の会議の会員と兼任しているは、当事者もしくは代理(“counsel”[31])でない限りにおいて、判決の過程に参加することができる。
13.
抗告は、教会会議が納得する理由によって、抗告する者(“appellant”)が出席できないのでない限り、抗告する者本人が行う。 この場合において、彼は会議の会員に代理(“counsel”)となるように要請すること、もしくは、会議に[代理を]任命するように要請することができる。 もし、抗告する者が次回の上位会議で、あるいは会議が指定する日時に、彼の抗告申し立てを主張することに失念した場合、下位会議の決定のほうが有効とされる。 もっとも、彼は、抗告申し立てがなされている会議に適切に通知がなされた上で、後日の会議に出席し、彼の出席失念は不可避な状況下でおこったことを証明することができる。 もし、会議が妥当と認めれば、直ちに抗告申し立ての聴取にとりかかるか、もしくは、後日の公聴会の日時を指定することができる。
14.
上位の教会会議は、かかる抗告を審理するにあたって、下位の教会会議に適切な告知がされているか、そして、当該事例の記録と文書が用意されているか、を確認する。 もし、この条件が満たされていれば、教会会議は次の過程を開始する。
a)
書記が告発文を朗読。
b)
告発とその理由を朗読。 (下位会議に提出されたものと同じものであること。)
c)
事例に関する記録と文書を朗読。 (双方の同位で、些細な点は省略可。)
d)
告発理由への下位教会会議からの回答を(もし提出されていれば)朗読。
e)
抗告する者(“appellant”)による始まりと終わりのスピーチによって、当事者が審問される(“The parties shall be heard.”)。 この終わりのスピーチにおいて、彼は新たな論点を持ち出すことはできず、むしろ、相手側から提示された論点への反駁に自ら[の議論]を集中しなければならない。
f)
当該事例についての討論が認められる。
g)
抗告に関する支持・不支持の投票。
誤謬の詳細については、別々に投票される。[32]
15.
上位の教会会議の決定は、下位の会議の記録に全く依拠するものとする。 上位の会議は、下位の会議の決定を、部分的であれ全体であれ、確認すること、もしくは破棄(“reverse”)することができる。 もし、抗告が支持されれば、下位会議の決定は破棄される。 もし、抗告が支持されなかったら、下位会議の決定が承認される(“affirmed”)。 もし、下位会議が本件取り扱いにおいて定められた手順を遵守しなかった場合、上位会議は、その裁量権において、当該事例案件を下位会議へと差し戻して、新たな事例[とする]ことができる。 もし、下位会議の決定が不正であって正しいと認められない場合、上位会議が裁判を開始することができる。 各裁判事例について、すべての裁判過程の記録が理由を付した状態で保管されるものとする。
[第二部はここまで。原書では - p.81 [33]]
[1] “formal” は原則的に「正式な」と訳出した。 「公式な」がより好ましかったかもしれない。(訳注)
[2] 会員の定義がいささか曖昧。 広義では「教会員」、狭義では「(中会等の)議員」か。 (訳注)
[3] “to whose jurisdiction he
himself belongs.”: 英文でも、<彼>が告発者か被告発者か不鮮明。
おそらく、被告発者の属する教会会議(小会、中会)のことか。 (訳注)
[4] “court” : なぜか、第二部では 小文字の『コート』である。 (訳注)
[5] “may” が用いられているため、教会の外の者にも依頼できるようなニュアンスを感じるが、
制限的原則(“Regulative
Principle”)を教会政治にも援用する限り濫用はされまい。 (訳注)
[6] (一般的な表現を用いると言う)原則を守れ!とも、柔軟対応せよ!とも解釈できる。(訳注)
[7] 「参照する、照会する」というより一般的な意味もある。 「事件付託」は法律用語。
どちらの訳が適切かわからず。 (訳注)
[8] “copy” には 「写し」という意味もあるが、「一葉(一冊)」という意味もあり、後者の
意味であれば 告発文(原本)ということになる。 (訳注)
[9] 原書 p.82
[10] 原書 p.82
[11] “witnesses subject to
co-ordinate courts…” の訳
[12] 意味不詳。 (訳注)
[13] 原書 p. 76 意味不詳。 (訳注)
[14] 日本語にしようとすると 同語反復に? (訳注)
[15] これは、”and when…” で始まる従文であるが、この主文がはたしてどこからどこまでか
不詳。 原書 p.77 (訳注)
[16] 原書 p.82
[17] “official”
とあるが 公証人(notary
public)のことか? 原書 p.77 (訳注)
[18] 教会会議(小会、中会、シノッド)のことか?
原書 p.77
(訳注)
[19] 英米法に特有な概念。 (訳注)
[20] “unless members of the court” の訳。
原書 p.78
[21] 原書 p.84
[22] 歴史的訳注: アメリカ南長老伝統に立つ者からは異論が出るであろう表現。
[23] 第一部で「審理」と訳してしまったが、ここの文脈によれば、記録(議事録等)の「審査」と
したほうがわかり易いだろう。 (訳注)
[24] 定義不詳。 別な箇所では、「助言者」と訳しておいた。 (訳注)
[25] “action” 一般的には「行為」であるが、「判断、判決」の意もある。 (訳注)
[26] ある意味で「少数意見の意思表示」である“dissent” の議事録記載は、長老主義の歴史においても
重要な権利。 (訳注)
[27] 意味不詳 (訳注)
[28] 「抗告を発した・・・」で はたして正しいのか、わからず。
[30] “he” は下位会議の議長のことか。 さもなくば、被告発者。(訳注)
[31] 定義不詳。 別な箇所では、「助言者」と訳しておいた。 (訳注)
[32] 意味不詳。 原書 p.81 (訳注)
[33] 以上、<序>と<第一部>の逐語訳とあわせて、遠藤による私訳(試訳)にすぎず、
日本中会の公式な翻訳ではない。 This is not the official Japanese
translation of the new BOOK OF
DISCIPLINE.