『規律書』改定案: 限りなく逐語訳に近い日本語訳 (その2)
第二部: 正式[1]な裁判の特別戒規過程 [原書 p.74-]
序: この第二部を活用する前に、第一部を読んでおくこと。
第二部は正式な裁判の場合にのみ用いられる。
第1章: 当事者と法治権
事例に関する当事者
1.
被害者が、私的(個人的)な違反についての告発者となる。
上記(第一部、第二章)に記載されている和解の手段が講じられた証拠が示されない限り、この正式の[裁判]過程が採られてはならない。 かかる過程が採られる以前に、教会会議は、正式な裁判過程によらずに、事例の解決をはかることが適当(“proper”)である。
2.
品行方正な(“in good standing”)会員[2]は、誰でも、他の会員を、彼の[3] 裁判権が属するところの教会会議[4]に訴えることができる。 また、強いられて告発者になってもいけない。 品行方正とは言い難い会員や精神的失陥を持つ会員からの訴えが受理される際には[その訴えの妥当性について]調査を必要とし、悪意を公とする(“manifest malice”)者からの[訴え]はいかなる時も受理されない。 もし、訴えが虚偽であるか、悪意にもとずくものであることが判明した場合は、訴えを起こした者が譴責の対象となり得る。
3.
教会会議は、告発者の不在のために、戒規がおざなりになるようなことを許容してはならない。 違反が公の知るところとなり、あるいは私的なスキャンダルが公的なスキャンダルとなった場合、そして、[当事者の]個人が告発者となることを拒否しているような場合、教会会議が 調査のために特別検察委員を任命し、かかる訴訟手順を遂行しななればならない。 特別検察委員は、その教会会議、もしくは下位の会議、あるいは一会衆の会員であってもかまわない。 [5]
4.
教会会議は、公的報告(“fama clamosa”)に基づいて、特別検察委員を任命することで、その過程を開始することができる。 この公的報告とは、広く知られ、あやふやではなく、公知のもの、そして信頼性を認められるもののことであって、無責任な噂(うわさ)とは異なる。 訴えは、より一般的な表現で記述されるものとする。 が、その他の全ての面において、[各々の]訴えの特殊事情に応じて、原則に順応するものとする。[6]
(下記 第二章、第一段落 参照)
噂に基づく[裁判]過程の開始を回避するために、噂を調査する委員会がまず構成されてもかまわない。 名誉毀損をされたと考える者は調査を要請することができる。 教会会議には、この要請を受理するか却下するかの[判断について]裁量権がある。
法治権(“Jurisdiction”)
5.
教える長老の[会員権]停止、[役員権]剥奪、除名については 中会に源泉的な法治権が属する。: その他[の法治権]については 小会に属する。 上位の教会会議は、下位の会議に対して[裁判]過程開始を指示できる。 もし、下位の会議が過程開始を拒否するか、その適切な能力を欠く場合は、上位の教会会議は過程を[自ら]開始するか、委員会を指名できる。
6.
もし、他の会衆(教会)の地区に居住している会員が、譴責に値する違反をしていると告発された場合は、彼の居住する地区の会衆(教会)の小会が、彼の所属する会衆(教会)の小会に事件付託(”shall refer”[7])をする。 他の[中会の]地区にすむ教える長老についても、彼の所属する中会が同様の手段を講じることができる。 あるいは、彼の所属する教会会議が、彼の居住する地区の教会会議に、事例審理を要請し権限付与することができる。 [ある任意の]会衆が解散した場合、この小会で審理中の事例は、中会の法治権の下に移動する。 もし、[ある任意の]中会が解散した場合、この中会で審理中の事例は、シノッドの法治権の下に移動する。
特別規定
7.
当該事例の当事者、助言者、検察委員は、本件の結審に[判事として]参加することはできない。
8.
訴追され、刑罰を受け、あるいは有罪判決を[すでに]受けた者が、同じ件で、更なる訴訟にさらされたり譴責を課されることがあってはならない。*
(* 第三章、第13段落、最後の文 参照)
9.
教会会議は、この第二部を、第一部に記載の譴責行為をするにあたっての参考にすることはできる。 しかしながら、前述の 特別規定の7項、8項 については、 第一部の規定の下(もと)で決定された すべての戒規事例に該当する。
第2章: 裁判過程の開始手順
1.
正式な裁判過程を開始するためには、告発者もしくは特別検察委員が告発内容を文書化し、署名の上、提出するものとする。 それには、この行為の具体的な違反[内容]、日時、場所、状況が明記されるものとする。 それには、証人の名簿と、証拠として提出された全ての文書のリストが掲載されるものとする。
2.
告発文に署名した者は、当該事例の起訴行為(“prosecuting”)に責任を負う。 もし、教会会議が、申し立てられた違反内容が譴責対象となり得ると判断し、また、提示された証拠が裁判に充分なものであると判断し、しかも、キリストの定め(マタイ18:15−16)に則していると確信するに至った場合、[教会会議]はその訴えを詳細を付記した上で、告訴状として文書にしたためるものとする。* これは、これを発する教会会議の議長と書記によって署名される。
(* 第二部、第三章、第五段落 参照)
3.
告発がなされた会合においては、裁判の日時、場所を決定し、当事者全員を召還すること以外、それ以上の審議や決定がなされてはならない。 不必要な遅延が起きてはならないとはいえ、[告発者側と被告発者側の]双方に充分な準備期間が与えられる。 全ての当事者の同意が無い限り、告発状の発行から裁判当日までに、最低10日間が必要である。 もし、新たな証人や証拠が見つかった場合は、被告発者には その事実が知らされて、抗弁の準備のために追加的時間が与えられる。
4.
告発文の公式な写し(“an official copy”[8])が、被告発者に渡されなければならない。 また、それは、告発に応じるようにとの召還状(議長、書記の署名がなされたもの)とともに、彼の家屋に置いてくるか、もしくは書留郵便によって[配達される。] もし、最初の召喚状が無視された場合、教会会議は第二の[召喚状]が発行される。 それによって、適宜、猶予期間が与えられ、また、彼が出席しない場合でも[被告発者の]欠席のままで[裁判が]進行することを知らしめる目的を果たす。 もし、被告発者が、最初の召喚状を無視すると宣言したとしても、教会会議は第二の召喚状を発行するものとする。 (推奨様式 20号 [9] 参照)
5.
召喚状は、教会会議によって任命された者であれば誰によってでも発することができる。 また、彼は、教会会議に対して、たしかに配達した(あるいは書留郵便で郵送した)ことを証言する。 もし、被告発者が返答しない場合、教会会議は[被告発者]欠席の状態で、[裁判]過程を進行させる。
6.
教会会議の書記は、告発者(または[特別]検察委員)により指名された証人に、召還状を発行する。 教会の会員だけが、召還され得る。 また、それは、彼(彼女)の所属する教会会議のみである。* また、その他の者の出席が要請されてもかまわない。 召還状を無視する会員は、会議への侮辱[と看做され]譴責の対象となり得る。 (推奨様式 21号 [10] 参照)
(* 第二部、第三章、第八段落 参照)
7.
もし重要な証人が出席できないような場合、教会会議は1人ないし複数の会員を指名して[重要な証人]の証言を記録して[くる]ことができる。 かかる状況において、当事者たちには、証人に直接面談し、質疑を行うという利点がある。 教会会議には、被告発者にたいして、その名誉を守るための ありとあらゆる機会を提供する義務を有し、また、すべての状況下において、各個人が告発者と直接会う権利を確保する義務を有する。
8.
裁判を行っている[教会]会議(“the trial court”)の要求に応じて、同位の教会会議に[権威の下にある]証人は[11]、各々の教会会議によって裁判に召喚され、証言することができる。[12] 召還された証人は、召喚状に応じたことによって生じた諸経費について補填される権利を持つ。 召還状に応じることが不可能な場合、裁判中の教会会議は、その他の教会会議に、(各々の質問にたいする回答を含む)証言録を記録すること、そして、(裁判の記録されるものとして朗読されるべく)その公式な写しの送付を要請することができる。 その証言の価値の査定においては、教会会議は証人が被告発者と会っていないこと、反対尋問(“cross-examination”)の機会が与えられた者がいないことを考慮しなければならない。[13]
9.
教会会議は、裁判が決着するまでの間(もっとも、検察過程が不必要なまでに遅延してない限りにおいて)、被告発者にたいして 培餐の権利、もしくは、役員であれば]役員権の行使、または その双方を慎むように要求することができる。
第3章: [個々の]事例の裁判について
1. 裁判を遂行するにあたって、全ての審理過程の記録は、正確かつ信用に足る方法によって慎重に保存されるものである。 それには、とりわけ、訴え(”the charge and accusations” [14])、懇願と判決が、証人の証言とともに、含まれるものとする。 全ての記録の完全かつ原本に忠実な写しが、要請に応じて、上位の教会会議による参照可能な状態になっていなければならない。 当事者は、経費自己負担によって、各自の写しを有することができる。
2. 教会会議が成立した場合、議長は次のことを確認する。 [1] 告発文が発行され、証人は召喚されたか。[2] 当事者(または その代表者)が出席しているか。[3] 証人(もしくはその証言記録)が出席して([もしくは用意されて])いるか。 [以上である。] 裁判を開始するに際して、[まず初めに、] 議長は、いままさに教会会議の会員が取り掛かろうとしていることが厳粛な責務であること、主の家の裁判官としての彼らの責任について再認識を促し、そして、彼らの脳裏から全ての偏見と個人的な思惑を消し去り、被告発者と教会との霊的幸福(“the spiritual welfare”)を考えるように命じる。 議長は、訴えの性格とその重大さを説明し、戒規の目的を述べる。 彼は、被告発者の権利と義務とを明確にし、公正かつ公平な裁判を[被告発者に]約する。 裁判の過程において、いつでも、教会会議は3分の2[以上]の[賛成]投票によって、傍聴人の退出[命令]を決定することができる。 しばしば、「秘密会(”executive session”)」と称されるもののことである。
3. 各当事者は、出席すること、もしくは助言者・代表(“counsel”)によって代表されること[いずれか]ができる。 教会員ではなく、教会会議の法治権の下のない者が、助言者・代表として振舞うことはできない。 もっとも、これは、当事者が私的に法律的な助言を受けることを妨げるものではない。 当該事例において、当事者、助言者・代表、特別検察委員となっているものは、判決を下すことに参与することはできない。
4. 被告発者は、はなはだしい不正があったこと、教会会議には裁判権がないこと、または 告発は(証明されれば)譴責に値しないこと、を理由として、裁判過程に異議を唱えることができる。 教会会議は、彼の異議を聞き入れることはできる。が、彼は教会の原則に反して論じることは許されていない。 もし、これらの異議のいずれかが妥当と認められた場合、教会会議は本事例を却下するか、本質は不変更としつつも訴えに修正を加えるものとする。 被告発者は、当該事例の判決において、[参加している]教会会議の会員のいずれの会員についても、その資格に疑問を呈することができる。 もし、それが支持され、それ以上議員定足数を満たさないような場合は、本事例は上位の教会会議への事件付託(“be referred to”)される。
5. もし異議が却下された場合、議長は、被告発者にたいして、告発内容に関して「有罪」か「無罪」かを問う。 もし、「有罪」と返答するならば、教会会議は、課される譴責の重さについて決定する。 もし、「無罪」と返答するか、返答を拒否するならば、教会会議は裁判過程を進めることとなる。 いずれの場合にしても、彼の請願、あるいは返答の失念は記録される。 裁判の進展のために必要であれば、検察側の証人が召喚され、その後、抗弁する側[の証人が召喚される]。 双方が、相手に対して反対尋問(“cross-examine”)をすることがゆるされる。 被告発者が欠席していない限り、証人は彼の臨席のもとで尋問される。 全ての最初の証言が聞かれた上で、いずれの側からであっても、反論のための証言の機会が与えられる。 しかしながら、被告発者に証人の名前と証拠の趣旨とが知らされた時[15]、教会会議の許可がないかぎり、新たな証拠は加えられない。
6. 証人尋問は議長によって行われる。 いずれの側も、尋問の方法や特定の質問について異議を唱えることができる。 もし、議長が異議を却下した場合は、この訴えは教会会議に提出することができる。 もし、この裁定が支持されなかった場合は、この事実を(異議とともに)記録するものとする。 教会会議自体、あるいは当事者は証人宣誓を要求することができる。 宣誓は議長が司る。全員が起立し、証人は右手を揚げて宣誓する。 (宣誓文 については 推奨様式 22号 [16])
7. [告発者側、被告発者側]双方が、証人の品性と信憑性について、質問することができる。そして、教会会議は、異議を聞き、その[異議の]妥当性を判断する。 もし、異議が支持された場合、証人は退出を告げられる。 精神的欠陥、幼稚さ、生活上の醜行、悪意、は証人の証言[の妥当性]が問われる根拠となり得る。 これらの非適正要件の程度が、証人の証言を妨げる[理由として]は十分ではない。 しかしながら、教会会議の会員は分別力を用いてかかる証言の価値を判断しなければならない。
8. 証人は、[裁判審理中の]本件に関する限り、真理を、その全貌について、偽りなく、 証言する義務を負う。 それを行うことで、証人が自らを貶(おとし)める(“incriminate”)ような場合については、証言をすることを強いられないが、その理由を述べる義務はある。 質問、そして、彼の回答拒否とその理由は、すべからく記録される。 教会会議のすべての会員は、[彼自身も]証人として、本件に関して彼が知りうるところのありとあらゆる事柄を教会会議に知らしめて公正な判決に資する義務を有する。
9. 証人は、裁判審理中に証言を補遺(”postscript”)という形で訂正することができる。 また、それは適切に記録される。 信用に足る証人であり得たと思料される故人の供述や文書の証拠は、書かれたものであれ、印刷されたものであれ、受理される前に、適切に本物であるとの確認(“authenticated”)がなされなければならない。 通常、それは「宣誓供述書(“affidavit”)」によって確証され、合法的に任命された官吏[17]によって証言されなければならない。 他の司法権主体(“judicatories”[18])の議事録からの引用は、書記の署名によって本物であるとの確認がなされる。状況証拠は決定的[な証拠]ではない。 夫婦は、他方が審理[の対象]とされている時に、証言することを強要されないものとするが、[証言は]許容され得る。
10.
被告発者は、自分自身のために証言することができる。 証拠が欠乏しているような極端な事例においては、「無罪の宣誓(“an oath of purgation”)[19]」をすることができるが、促されるわけではない。 いずれかの側の当事者の要請によって、後段になって尋問される予定の証人を、(もし彼が教会会議の会員でなければ、[20])前段の証人尋問に移すことができる。 ( 推奨様式 31号 [21])
11.
全ての証拠が提示された後、収束を告げる文章が読まれる。 被告発者が、まず発言し、そして検察側[が発言する]。 しかしながら、いずれの側も、記録にあることを超えた事柄や新たな事柄には言及しないものとする。 かかる後、教会会議は、いずれの側からにせよ、更に聴取する必要があるかどうかを決定する。
12.
「当事者の退廷を求める」動議は、次の段階である。 これが[意味することは]、教会会議が(証言の中の疑惑部分を明瞭にするために再度召還することは別として、) 彼らが、これ以上の審理への参加を[認められず、会議席上からの]退場を求められることである。 教会会議は別室に退くか、もしくは、全ての当事者、証人、そして非会員を退場させることができる。 もし、いずれかの側が異議を唱えるならば、全ての審理に出席(参加)した会員でない限り、最終判決の際に投票することはできない。 その故に、正確な出席記録が記される[必要がある]。
13.
教会会議(“the court”)は、証拠の考察において、そして正しい決断に達することができるようにと神様の導きを求める祈祷をもって、審理を開始する。 「立証責任(“the burden of proof”)」は検察側にある。 訴えは、いくつかの細目(部分)から構成され得る。 そして、そのような場合は、投票は各々の細目(部分)に対してなされる。 単一の証言[のみ]によって、被告発者が有罪とされることはない。 もし、ある細目、あるいは全体に対して有罪との判決がなされた場合、教会会議は課される譴責の重度を決定する。 もし、法的証拠が有罪を確証するに足りない場合、宣告は「無罪」でなければならない。教会会議が結審した場合、当事者は呼び戻されて、結果が申し渡される。譴責が課された後に、有罪の判決を受けた者の側において新たな証拠が発見された場合で、しかも、重要性が十分あると思料される場合は、当初の法治権主体(“the court of original jurisdiction”)において再審理をすることが認められる。
第4章: 下位会議から上位会議への事件移送(“removal”)
1. 長老教会政治は、教会会議の上下関係を規定している[22]。 それにより、下位の教会会議は上位の会議に対して責任を負っている。 下位の会議の議決は、上位会議において審理され、[必要に応じて]改訂を受ける。 教会員は、誰でも、下位会議から最高位の会議に至るまで、訴えを起こすことが認められている。 充分な理由があれば、 上位会議は、かかる訴えを却下できる。 下位会議の議決は、上位会議の裁判権の下に、[<